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サインバルタ【お薬Q&A】

執筆者の写真: Keishu ShimanoKeishu Shimano

よこはま北星こころとからだのクリニック、院長の島野です。

サインバルタ(一般名;デュロキセチン塩酸塩)のよくある質問について解説します。




サインバルタについて解説するワニ
一般名はデュロキセチン塩酸塩

1. どんな薬?

 サインバルタ(一般名:デュロキセチン塩酸塩)はSNRIに分類される抗うつ薬です。うつ病、抑うつ状態に処方されることがあります。落ち込みに関わるセロトニンだけでなく、意欲に関わるノルアドレナリンの作用を高めることで落ち込みを改善します。また、サインバルタは抗うつ作用だけでなく、慢性的な疼痛に効果があることも大きな特徴です。そのため糖尿病性神経障害や線維筋痛症、慢性腰痛症、変形性関節症などに処方されることがあります。痛みを抑制する作用は中枢神経系の痛みをコントロールする経路を活性化させることでもたらされます。



2. 用法、用量、剤形は?

 サインバルタ(一般名:デュロキセチン)は1日1回、朝食後に内服するお薬です。他の抗うつ薬と違い、「朝食後」と指定されている点が特徴です。用量は20mgと30mgがあり、カプセルタイプのお薬です。内服開始は20mgから始め、20mgずつ調整します。1日の最大量は60mgです。




3. なぜ朝に飲むの?

 サインバルタの臨床試験において、朝以外の内服では身体に吸収されるのに時間がかかるうえ、吸収される量も低下することが示されたため、朝食後の内服と指定されました。このようにお薬を認可するにあたって様々なデータを取り、ベストな内服タイミングを決めているわけです。

 サインバルタの内服で日中の眠気が問題となる場合には、朝食後ではなく就寝前や夕食後に内服してもらうこともあります。あくまで基本は朝食後の内服ですが、変更することも可能ということですね。内服のタイミングを変更したいときは主治医に相談してみましょう。



4. いつ効き目が出る?

 サインバルタ(一般名:デュロキセチン)がうつ病に効果を発揮するためには一般的に2週間~4週間かかると言われています。これはサインバルタの作用部位が中枢であることが関係しています。人間の脳はBBB(血液脳関門)と呼ばれるバリアで厳重に保護されています。脳は生存に不可欠な部位ですから、不純な化合物が簡単に到達できないようになっているわけです。このBBBを突破してサインバルタの作用部位に到達するためには、時間が必要です。




5. 効き目は強い?

 うつ病に対するサインバルタの効き目は普通程度です。2018年、Lancetに掲載されたネットワークメタアナリシスを参考にすると、効果は他の抗うつ薬と差がありませんでした。ただし継続率ではレクサプロ(一般名:エスシタロプラム)、パキシル(一般名:パロキセチン)、ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)、トリンテリックス(一般名:ボルチオキセチン)よりも悪いことが指摘できます。効き目は普通だが、他の抗うつ薬より続けにくい、というのがサインバルタの評価です。この論文だけを根拠にするならば、サインバルタは第一選択にしにくいお薬です。疼痛に有効という他の抗うつ薬にはない特徴を活かせる状況では良いかもしれません。どの抗うつ薬を選ぶべきか、主治医とよく相談することが大切です。





6. サインバルタはやめられなくなる?

 サインバルタ(一般名:デュロキセチン)は依存性や耐性の心配がないお薬です。急にやめてしまうと離脱症状(耳鳴り、苛立ち、吐気、頭痛など)が起きることがありますので、安全のためにゆっくり減らすことが大切です。


7. 飲み合わせの悪い薬はある?

サインバルタ(一般名:デュロキセチン)はロキソニン、エリキュースとの併用で出血傾向が増大する可能性があります。また降圧薬であるアーチスト(一般名:カルベジロール)との併用で効果が減弱する恐れがあります。これらは併用禁忌ではなく併用注意なので、絶対に一緒に使ってはいけないということではありません。併用している薬がある時は、お薬手帳を主治医に見せてください。



8. サインバルタは頭痛に効く?

 サインバルタは頭痛にも効果が期待できます。サインバルタを飲むことで脳内のセロトニン量が調整され、頭痛の原因となる血管の収縮・弛緩を適切に調整するためと考えられています。



9. まとめ

 サインバルタ(一般名:デュロキセチン)は疼痛にも効果があるという点が最大の特徴です。うつ病や不安障害で、身体の疼痛が合併する場合には、患者さんの希望を聞きながら優先的に選ぶこともあります。抗うつ薬には多くの種類がありますので、どれを選ぶか主治医とよく相談して決めるようにしましょう。



監修:島野 桂周(精神科医・精神保健指定医)

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