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執筆者の写真Keishu Shimano

休職について①

 心療内科・精神科には対人関係、多忙、パワハラなどで仕事が辛いという方が多くいらっしゃいます。精神的に辛い状況になった際には休職し、休養に努めることも時に必要です。今回は休職にまつわる疑問について解説します。

休職について考える人

 

1. 休職させてもらえないことはある?


 結論から言えば、医師の診断書が出ている限り、休職させてもらえない可能性は極めて低いです。診断書とは、医師が作成して発行する公的な書類です。公的な「証明」として扱われることから、保険金の請求根拠や裁判の証拠資料として扱われることもあります。もし会社が診断書を無視して働かせ続けた場合、安全配慮義務違反となり、罪に問われる可能性すらあります。そのため診断書で「休職が必要」と述べられている限り、会社としては休職させざるを得ません。このような事情から、診断書を出したのに休職できないという事態は、ほとんど心配する必要がありません。


 

2. 医師に診断書を書いてもらえない可能性はある?


 医師法第19条第2項において「医師は診断書を求められた際には原則として応じる義務がある」と規定されています。そのため、診察を担当した医師に診断書を求めれば、診断書を発行してもらえます。

※ただし次のような場合には診断書の交付を拒否される可能性があります。

  • 患者に病名を知らせるのが好ましくない場合

  • 診断書が恐喝や詐欺などに使用される恐れがある場合

  • 患者本人以外(家族も含む)が交付を要求した場合

  • 医学判断が不可能な場合


 注意が必要な点として、診断書の記載内容は医師の判断となります。休職したいと考えていても、医学的にその必要があるとまでいえない、と判断された場合には、「休職が必要」という文言が書かれていない診断書が交付される可能性はあります。しかし、医師は基本的に患者さんの立場に立って診療にあたるものです。「もう限界です」と言っている患者さんを前に「もっと頑張れ」とムチ打つような医者は医療者として失格でしょう。もし休職したいと考えているのであれば、無理せずその考えを主治医に打ち明けてみてください


 

3. 休職以外の選択肢もある?


 たとえばいきなり休職ではなく、以下のような方法もあります。


心療内科へ受診したことを会社に伝える

 「受診した」という事実だけを伝える方法です。会社側には「何らかの不調が起きている」ということが伝わり、それだけでも業務上の配慮をしてもらえる場合があります。自分だけではSOSのサインを出しにくい、でもいきなり休職するのも不安だ、という場合はこのような方法も検討してみましょう。もし口頭で伝えることが苦手な場合は、受診した事実だけを記載した診断書も作成できます。受診時に相談してみてください。


産業医との面談を申し込む

 会社の産業医との面談をセッティングしてもらい、現状の困りごとを相談してみましょう。産業医は従業員の健康状態を(メンタルヘルスも含めて)把握し、適切に指導する責務を負っています。産業医面談で精神疾患が疑われる場合には、クリニックに紹介状を書いてもらえることもあります。「精神的に辛いが、クリニックに行くべきかどうか自分でもよく分からない」という場合は、検討してみてもよいでしょう。


業務負荷を減らしてもらう

 現在の病状と業務内容に関係があると認められた際には、業務負荷を減らすよう指示する診断書が交付されることがあります。会社としては安全配慮義務から可能な限り応じる姿勢が求められることになります。実際にどのような対応となるかはケースバイケースなので一概には言えませんが、例えば残業制限や宿直業務の免除、特定の業務(電話応対や営業など)を控える、といった対応が多くみられます。


 

4. まとめ


 「もう限界だ、休職したい」と考えても、初めてのことでどうしてよいか分からない方は多いでしょう。また、真面目な方ほど「ずる休みしたいだけと思われるのでは」と心配されるようです。しかし、患者さんご自身が何を望んでいるのか、ということは方針を決めるうえで最も重要な情報のひとつです。ぜひ遠慮なく、主治医にご自身の要望を伝えて頂ければ良いと思います。


 

監修:島野 桂周(精神科医・精神保健指定医)

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