よこはま北星こころとからだのクリニック、精神科医師の島野です。
この記事では高照度光療法という治療について解説していきます。
高照度光療法とは、ライトボックス(照明器具)を用いて網膜に刺激を与えることで、うつ病や概日リズムの乱れを改善する治療法です。
1. 高照度光療法のメリット
即効性が期待できる
副作用や妊娠などの理由で抗うつ薬を内服できない方も実施できる
薬物療法で効果が乏しい方にも効果が期待できる
手軽に自宅で行うことができる
お薬以外の選択肢として比較的手軽に始められ、即効性が期待できるという点では、取り組んでみる価値は大いにあるでしょう。安全に効果的に実施するため、医師による指導や評価が必要です。
2. 高照度光療法のデメリット
高照度光療法は保険が適応されない
実施している医療機関が少ない
重度のうつ病や双極性障害では効果が弱まる
安全な実施のためには医師の指導が必要
2025年現在、高照度光療法は健康保険の適応対象外です。このことから、積極的に高照度光療法を実施している医療機関は少ないのが現状です。また、そもそもどのような疾患に有効なのか、どのような特徴があるのかなど、基礎的な知識が医師の間で普及していないことも大きな問題でしょう。また照明器具による眼や皮膚へのダメージも懸念されるため、医師に相談することが望ましいと言えます。
3. どんな疾患に有効?
高照度光療法が有効とされる疾患は以下の通りです。
季節性感情障害(冬季うつ病など)
うつ病(季節性でないもの)
双極性感情障害のうつ状態
ADHDに伴う概日リズムのずれ
時差ぼけ
網膜に適切な光刺激を与えることでメラトニンの分泌量を調整し、概日リズムを整えることで効果を発揮すると考えられています。
4. 高照度光療法の実施方法
実施する際のポイントを整理しました。
毎朝8時前に行う
光源の明るさは2500~10000ルクス
30分~2時間程度を目安に照射する
光源と目の距離は40cm程度
朝の実施が難しければ日中や夕方に行う
秋に治療を開始し、春頃まで続ける
概日リズムを整えるという観点から、早朝(午前8時より前)の実施が推奨されています。具体的なイメージとしては、食卓テーブルに照明器具を設置し、照明をつけてから朝食を摂りはじめ、30分以上かけて食事を終えると良いでしょう。使用する照明器具の指定はありませんが、皮膚や眼を保護する観点から、紫外線が含まれない照明がおすすめです。
高照度光療法を実施する期間は、2024年1月に公表されたメタアナリシスを参考にすると、薬物療法を併用している方では35日程度、併用していない方ではおよそ60日程度で効果が飽和するようです。
5. 高照度光療法の副作用
吐気、頭痛、目の違和感が挙げられます。副作用がつらい場合は、光源と目の距離を離したり、実施する時間を短くすることで調整します。また、頻度は少ないですが高照度光療法が躁状態を引き起こす(躁転する)可能性があります。そのため、高照度光療法を開始する際には必ず医師に相談してから始めるようにしましょう。
6. 効果が出るまでの時間
高照度光療法は、薬物療法や認知行動療法に比べ即効性があるという点が大きな特徴です。早ければ数日程度でうつ症状の改善が認められるという報告もあります。このため、予防的に毎日行うのではなく、気分の落ち込みや意欲の低下など、うつに関連した症状が出現してから始めるのが良いと考えられています。
7. 高照度光療法の注意点
高照度光療法は手軽に始められる点が大きなメリットです。しかし医師の適切な指導のもと行わないと効果がないばかりか、眼や皮膚のトラブルに発展する危険性もあります。また、気分の落ち込みが病気によるものかどうか、躁転のリスクがあるかどうかも含めて、まずは医師の判断を仰ぐべきでしょう。ぜひお近くの医療機関で高照度光療法について相談してみてください。
監修:島野 桂周(よこはま北星こころとからだのクリニック精神科・精神保健指定医)
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