ベンゾジアゼピン系睡眠薬(BZ系睡眠薬)と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(非BZ系睡眠薬)の違いについて精神科医が解説します。
BZ系 | 非BZ系 | |
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メリット | ・不安やけいれんを抑える作用がある ・種類が豊富 ・作用時間が選べる | ・転倒やふらつきのリスクが少ない ・依存を形成しにくい ・深い睡眠を得やすい |
1. 受容体の違い
BZ系睡眠薬、非BZ系睡眠薬ともに脳内のベンゾジアゼピン受容体という部位に働くことで、抗不安作用や催眠作用を及ぼします。ベンゾジアゼピン受容体にはω1、ω2の2タイプがあり、それぞれ働きが違います。
ω1受容体:催眠作用
ω2受容体:抗不安作用、筋弛緩作用
BZ系睡眠薬はω1、ω2の両方に働くのに対し、非BZ系睡眠薬はω1に優先的に働きます。ω2への作用が少ない分、筋弛緩作用は少ないです。ふらつきや転倒のリスクは非BZ系睡眠薬の方が少ないことがデータでも示されています。以上のような違いから純粋に睡眠薬として使うなら、非BZ系睡眠薬の方が適していると考えられます。
2. 睡眠深度の違い
睡眠はその深さによって4つのステージに分類されます。90分を1サイクルとして深くなったり浅くなったりを繰り返すことで、脳や身体の疲れが取れていきます。睡眠中の脳波を記録することで、睡眠の深さを調べることができます。
BZ系睡眠薬を投与すると、睡眠時間そのものは延長しますが、浅い睡眠が全体的に増える傾向があります。一方で非BZ系睡眠薬は深い睡眠の時間を増やす傾向があり、睡眠の満足感が得やすいという特徴があります。実際、BZ系睡眠薬では「気絶したような眠り」に対し、非BZ系睡眠薬では「ぐっすり眠れた」という感想を患者様から頂くことが多いです。
3. 薬剤数の違い
4 . 作用時間の違い
BZ系睡眠薬は作用時間の違いから下記のように分類されます。
超短時間作用型
短時間作用型
中間作用型
長時間作用型
一方で非BZ系睡眠薬は短時間作用型しかありません。作用時間の違いは、睡眠の維持に関係します。作用時間が長いほど、途中で目が覚めにくくする作用が強くなります。このことから、スムーズに眠るために非BZ系睡眠薬は有効ですが、途中で目を覚めにくくするという点ではBZ系睡眠薬の方が適役でしょう。
5. まとめ
BZ系睡眠薬も非BZ系睡眠薬も、それぞれのメリット、デメリットがあります。睡眠の作用をメインに考えるなら非BZ系睡眠薬の方が優れている場合が多いでしょう。しかし抗不安作用やけいれんを抑える作用をメインで考えればBZ系睡眠薬の方が適しています。どの薬を使うべきか、主治医と相談しながら決めていくことが大切です。
監修:島野 桂周(精神科医、精神保健指定医)
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