
「よこはま北星こころとからだのクリニック」院長の島野です。
「寝付くのに時間がかかる」
「途中で何度も目が覚める」
「寝ても疲れが取れない」
このような慢性的な不眠(睡眠障害)についてお悩みの方に向け、治療の基本的な考え方を解説します。
不眠症の基本的な解説はこちらを参照ください。
参考:不眠症について
たったの2ステップです。
ステップ1. ゴールの設定
ステップ2. 睡眠習慣の見直し
ステップ1. ゴールの設定
不眠(睡眠障害)の治療においてはゴール設定が大切です。ここが曖昧だと、終わりのないマラソンを走っているような状況に陥ります。不眠症のゴールは「日中活動が十分にできること」であり、このゴールは全ての人に共通します。
そもそも睡眠は何のためにとるのでしょう?
答えはひとつ、「日中活動を十分に行うため」です。
眠るために日中活動するのではなく、日中活動するために睡眠をとるはずです。起きている間のパフォーマンスが十分に発揮できるなら、眠れない日や中途覚醒の多い日があっても良しとしましょう。むしろ睡眠状況に一喜一憂し続ける方が問題です。睡眠は手段であって目的ではないことを肝に銘じましょう。
ステップ2. 睡眠習慣の見直し
厚生労働省が「健康づくりのための睡眠指針2014」という資料を公開しています。冒頭には「睡眠12箇条」が掲げられています。

この12箇条の後に「解説ページ」があり、それぞれの項目が詳細に解説されています。真剣に不眠症と向き合うのであれば、必読です。何度も読み直し、頭にインプットしましょう。いくつかの項目について解説していきます。
・昼寝をしない
昼寝は睡眠・覚醒のリズムを阻害します。昼寝は10分-20分程度にしましょう。
・カフェインを摂らない
カフェインは入眠を妨げます。さらに利尿作用があり、夜中に尿意で目が覚める原因にもなります。カフェインの半減期は4-6時間程度と言われています。夕方以降のカフェイン摂取は避けるようにしましょう。
・ニコチン、アルコールを避ける
タバコに含まれるニコチンは覚醒作用があり入眠を妨げます。アルコールは睡眠を浅くする作用があり、中途覚醒を増やします。物質の影響を最小限にすることは入眠や睡眠維持を助けるだけでなく、生活習慣病を予防することにもつながります。
・寝床の温度、湿度、暗さ、騒音をチェック
睡眠が中断されるようなストレスがないか、睡眠環境を確認しましょう。
・1日30分程度の運動をする
睡眠は振り子運動です。日中の活動量が増える程、夜の睡眠の質が上がります。
・起床時刻を決めて必ず守る
良い睡眠には、良いリズム、規則正しい生活が必要です。リズムが整ってくると、自然な眠気が出てきます。自然に感じる眠気こそ「最良の睡眠薬」です。
3. まとめ
睡眠薬を飲めば一時的に眠ることはできますが、根本的な解決にはなりません。不眠のゴールラインを正しく設定し、睡眠習慣を見直すことで、根本的な改善を目指すことが必要です。今回紹介した「健康づくりのための睡眠指針2014」は現在改訂版の作成が厚生労働省によって行われています。すでに草案が公開されていて、この10年で蓄積された新しい知見も盛り込まれています。不眠についてさらに詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
監修:島野 桂周(精神科医・精神保健指定医)
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