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執筆者の写真Keishu Shimano

季節性感情障害(冬季うつ)を解説!

冬の朝に落ち込んでいる女性
毎年、冬になると気分が落ち込む

よこはま北星こころとからだのクリニック、精神科医の島野です。

今回はSeasonal Affective Disorder(SAD)=季節性感情障害について解説します。いわゆる「冬季うつ」と呼ばれる疾患で、季節に連動した気分の落ち込みが出現する病気です。





 

1. 季節性感情障害について分かっていること


  • 季節性感情障害には、冬にかけて気分が落ち込む冬型(winter SAD)と、夏にかけて気分が落ち込む夏型(summer SAD)とがあります。

  • 男性より女性に多く、男女比は1:3で、比較的女性に多いという報告があります。

  • 老年層より若年層で患者数が多いことが知られています。

  • 有病率は研究によってばらつきがありますが、概ね1-2%程度と言われています。


 

 

2. どんな人がなりやすい?


リスク因子として以下のような点が挙げられます。


  • 血縁者に精神疾患があること

  • 気分障害の既往があること

  • 赤道からの距離が離れていること

  • ビタミンDの不足

  • 日照時間が短いこと

 

緯度が高く日照時間が短いと、落ち込みやすくなる、というのはイメージしやすいでしょう。背景にはメラトニンの分泌量が関わっていると考えられています。網膜への光刺激が少ないと、メラトニンの分泌量が増え、倦怠感や眠気、無気力感が増大します。これが冬季うつの症状を引き起こしているのではないかと考えられます。


しかし緯度の高いアイスランドやカナダの調査では、冬季うつを発症しやすい人とそうでない人が分かれており、日照時間というより人種や民族的な背景が影響しているのではないか、という指摘もあります。結局のところ、日照時間の違いだけが原因ではないということですね。


ビタミンDは脳内で働くセロトニンの合成に重要な働きを持ちます。ビタミンDの不足がセロトニンの不足に繋がり、うつ状態が引き起こされる、というメカニズムも考えられています。食事に偏りがある場合は見直すことが必要かもしれません。

 

 

 

3. 冬季うつの特徴は?


 まず、冬季うつで出現する症状は、一般的なうつ病の症状と同様で

  • 抑うつ気分

  • 意欲低下

  • 集中困難

  • 疲れやすさ

  • 不眠

  • 体重低下

  • 食事量低下

  • 希死念慮

などが挙げられます。ただし、冬季うつ病では「過眠」や「過食」、「体重増加」の頻度が高いと言われています。これを「非定型うつの症状」と表現します。過食では特に炭水化物を中心とした甘いものへの欲求が強まります。以上のような症状が、季節の変化に伴って周期的に表れることが季節性感情障害(冬季うつ)の特徴です。

 

 

 

4. 冬季うつの治療法は?


以下のような治療法が有効と考えられています。

  • 高照度光療法

  • 抗うつ薬による薬物療法

  • 認知行動療法

  • ビタミンDの補充

 

特に高照度光療法は、医師の指示のもと自宅で手軽に始めることができ、即効性も期待できるため試してみる価値はありそうです。光療法のための照明器具がネット通販などで販売されていますが、眼や皮膚にとって安全な器具を選択する必要があります。必ず主治医に相談しながら照明を選ぶようにしましょう。

 

高照度光療法について詳しくはこちら!

 

 

5. まとめ

 

 今回は季節性感情障害(冬季うつ)について解説しました。比較的新しい疾患概念であるため、信憑性の高い研究やデータが足りていないのが実情です。とはいえ2024年にはメタアナリシスが公開されるなど、研究者の間でも関心が高い疾患であることは間違いありません。今後も明らかになった知見があればブログの中で紹介します。

 

 

監修:島野 桂周(よこはま北星こころとからだのクリニック精神科・精神保健指定医)

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