強迫性障害について解説
- Keishu Shimano
- 3月16日
- 読了時間: 4分
よこはま北星こころとからだのクリニック、院長の島野です。
強迫性障害について解説していきます。

1. どんな病気?
強迫性障害とは不安や心配に捉われ、それらを打ち消すための行動を止められなくなってしまう病気です。無意味と分かっていても繰り返しやらないと気が済まなくなり、施錠を何度も確認したり、手を何時間も洗い続けてしまうなどの行動が出現します。症状そのものが苦痛であるうえ、行動に時間がかかるようになります。症状が悪化すると待ち合わせに遅刻する、仕事が進まない、ゴミが出せないなど、様々な形で生活に支障が出ます。
また強迫性障害は一般人口の1~2%に生じることが知られています。後発年齢は男女ともに10代~20代で、比較的若年の発症が特徴です。また、経過の中で30%程度の人がうつ病を合併することが知られています。
2.どんな症状があるの?
症状は大きく分けて2つあります。
・強迫観念
頭に浮かんでくる不安や心配のことを強迫観念と呼びます。
「汚れが付いている気がする」
「カギをちゃんと閉めただろうか」
「エアコンの電源を切っただろうか」
「ゴミ袋に大切なものが入っていないだろうか」
「車で人や物を傷つけていないだろうか」
「右手で物に触れたら左手でも触らないといけない」
強迫観念の内容はこのように様々で、多岐にわたります。もちろんこのような心配や不安は、多かれ少なかれ誰しもが経験するもので、これだけでは病気とはいえません。強迫観念に伴う強迫行為が出現し、それらが生活に支障を与える、もしくは苦痛が強い場合に強迫性障害と診断されることとなります。
・強迫行為
強迫観念から生じた心配や不安を打ち消すための行動を強迫行為と呼びます。強迫観念の内容によってさまざまな強迫行為が出現します。汚れに関する強迫観念(汚染恐怖)に対しては洗浄行為が出現します。「傷つけてしまったかもしれない」という強迫観念(加害恐怖)に対しては確認行為が出現します。このように強迫観念と強迫行為は対の関係にあります。強迫行為は強迫観念が一時的に弱まるまで何度でも繰り返されます。行為を繰り返すうち、ご本人も「そんなはずないと分かっているんだけど・・・」と、やめたくてもやめられない状態に陥ります。これを自我違和感と呼ぶことがあります。
3. 原因は何?
残念ながら原因ははっきりとは分かっていません。しかし、遺伝子が関係していること、脳内のセロトニンの働きが関係していることが分かっています。遺伝子があれば必ず発症するわけではありません。遺伝子の影響に加えストレスなど後天的な影響で発症するものと考えられています。またセロトニンの働きが脳内で不足していると、強迫性障害に関わる不安や心配が増悪するというメカニズムが指摘されており、治療のためにセロトニンの働きを強めるSSRIという薬が使われます。
4.強迫性障害の治療は?
強迫性障害の治療には認知行動療法と薬物療法があります。認知行動療法としては「暴露反応妨害法」が有名です。これは強迫観念により生じる強迫行為を我慢することで、症状を改善させる方法です。不安が生じる状況に意図的に触れることになるため、苦痛を伴う可能性がありますが、強迫行為をしないよう我慢を重ねることで少しずつ症状が改善します。薬物療法としては抗うつ薬であるSSRIを内服し、脳内のセロトニンの働きを強めます。セロトニンの働きが強まると不安や緊張がほぐれ、強迫観念や脅迫行為が軽減する可能性があります。
5.まとめ
強迫性障害の有病率は全人口の1~2%と意外と身近な病気です。症状が生活に深刻な影響を及ぼすこともあります。薬物療法だけでなく認知行動療法を組み合わせることで改善が見込めます。症状でお悩みの方はぜひ医療機関に相談してみてください。
監修:島野 桂周(精神保健指定医・精神科医)
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