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大人のADHD
​「先延ばし癖」

当院では18歳以上の方を対象に発達障害の診断・治療を行っております。

​大人のADHDで見られやすい「先延ばし癖」について解説します

なぜ先延ばしが起きやすい?

先延ばしが起こりやすい背景には、ADHDの特性としてみられる実行機能の弱さが関わっていると考えられます。

 

実行機能とは、やるべきことの優先順位をつける、作業の段取りを立てる、行動を始める、集中を保つ、途中で気持ちを切り替えるといった、日常生活や仕事を進めるうえで必要な機能のことです。

 

これらに苦手さがあると、やるべきことを理解していても、何から手をつければよいか分からなくなったり、最初の一歩を踏み出すまでに時間がかかったりします。

 

特に、達成感を得にくい作業や、手順が多く複雑な課題では負担感が強まり、後回しになりやすくなります。

 

また、先延ばしによる失敗経験が重なることで、「またできないかもしれない」という気持ちが強くなり、さらに行動に移しにくくなる悪循環が生じることもあります。

先延ばしが起きやすい状況

先延ばしは、課題の内容だけでなく、そのときの心身の状態や周囲の環境によって強くなりやすいことがあります。

 

たとえば、疲れているとき、不安が強いとき、気分が落ち込んでいるときには、行動を始めるためのエネルギーが出にくくなり、やるべきことがあっても手がつかなくなりやすくなります。

 

また、失敗したくない気持ちが強いと、課題に向き合うこと自体が負担となり、先延ばしにつながることもあります。

 

さらに、スマートフォン、動画、ゲーム、SNSなど、すぐに気を引くものが近くにある環境では、目の前の作業よりも即時的な楽しさに意識が向きやすくなります。

 

こうした状態が重なると、「後でやろう」が繰り返され、結果として先延ばしが続きやすくなります。

先延ばしへの対策例

先延ばしへの対策では、「気合いで頑張る」よりも、行動を始めやすくする工夫を重ねることが大切です。

 

ADHDの方では、やるべきことを理解していても、最初の一歩が出にくかったり、途中で別の刺激に注意がそれたりしやすいため、環境ややり方を調整することで取りかかりやすくなることがあります。

 

① 作業をできるだけ小さく分ける
「勉強する」「書類を出す」「部屋を片づける」といった大きな課題のままだと、負担が大きく感じられて手が止まりやすくなります。そのため、「机に座る」「教科書を開く」「必要書類を1枚出す」など、最初の一歩を小さくすることが有効です。始めるハードルを下げることで、行動に移しやすくなります。

 

② 締切ではなく、始める時刻を決める
「今日中にやる」「早めにやる」では動き出しにくいため、「19時に机に座る」「20時になったら申請フォームを開く」など、開始のタイミングを具体的に決めておく方法が役立ちます。先延ばしは、意欲の問題だけでなく、行動のきっかけをつかみにくいことで起きている場合も多く、始める条件を明確にすることが助けになります。

 

③ 気が散りやすい環境を整える
スマートフォン、動画、ゲーム、SNSなど、すぐに注意を引くものが近くにあると、目の前の作業よりも即時的な楽しさに意識が向きやすくなります。作業前に通知を切る、スマートフォンを別の部屋に置く、机の上をシンプルにするなど、気が散るきっかけを減らすことも大切です。環境を整えるだけでも、取りかかりやすさが変わることがあります。

 

④ 必要に応じて薬物療法を取り入れる
先延ばしが強く、日常生活や仕事、学業に大きな支障が出ている場合には、薬物療法が役立つこともあります。薬によって不注意や衝動性が和らぐことで、課題に取りかかりやすくなったり、途中で注意がそれにくくなったりすることがあります。ただし、薬だけで全てが解決するわけではなく、生活上の工夫や環境調整とあわせて考えることが大切です。実際には、どの対策が合うかは一人ひとり異なるため、困りごとの背景を整理しながら、自分に合った方法を見つけていくことが重要です。

受診を考えたほうが良いケース

先延ばしは誰にでもみられることがありますが、そのために学業、仕事、家事、金銭管理、人間関係などに繰り返し支障が出ている場合は、一度相談を検討してよい状態です。

 

ADHDは、症状があること自体ではなく、日常生活や社会生活にどの程度の困りごとや機能障害を生じているかが重要とされます。

 

大人のADHDでは、締切に間に合わない、書類や支払いを後回しにして問題が起きる、片づけや準備が進まず生活が回らない、といった形で表れることがあります。

 

また、先延ばしだけでなく、忘れ物やケアレスミスが多い、集中が続きにくい、予定管理が苦手、衝動的な買い物や言動が目立つといった特徴が幼少期から続いていた場合も、発達特性の関与を考える手がかりになります。

 

さらに、先延ばしの背景に抑うつ、不安、不眠、強いストレスが重なっていると、症状がより目立ちやすくなることがあります。気分の落ち込みや不安が強い、生活リズムが大きく乱れている、自分を強く責めてしまうといった場合も、早めに相談することが大切です。

 

特に、「自分の努力不足だと思っていたが、何度工夫しても同じ問題を繰り返す」、「子どもの頃から似た傾向があった」、「仕事や勉強の継続が難しくなってきた」という場合には、受診によって背景を整理し、自分に合った対策を考えやすくなることがあります。

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