大人のASD
「相手の感情や空気を読むのが苦手」
当院では18歳以上の方を対象に発達障害の診断・治療を行っております。
大人のASDで見られやすい「曖昧な指示が苦手」について解説します
なぜ「相手の感情や空気を読むのが苦手」?
ASD(自閉スペクトラム症)の方は、相手の表情や声のトーン、その場の雰囲気などから相手の気持ちを推測することが苦手な場合があります。
人とのコミュニケーションでは、実際には言葉そのものだけでなく、
-
表情
-
視線
-
声の調子
-
場の空気
-
前後の文脈
など、多くの情報が同時にやり取りされています。
しかしASDの方は、こうした非言語的な情報よりも「言葉そのもの」に注意が向きやすいため、相手の本当の意図や感情を読み取ることが難しくなることがあります。
また、脳科学的には「社会的認知」と呼ばれる機能の特徴が関係していると考えられています。これは、「相手は今何を考えているだろう」「この発言を聞いてどう感じるだろう」と推測する働きです。
もちろん個人差はありますが、ASDの方の中には、この推測を無意識に行うことが難しく、意識的に考えなければならない方も少なくありません。
その結果、悪気はないにもかかわらず、人間関係で誤解が生じてしまうことがあります。
困りごとが起きやすい状況
具体例①
パートナーが疲れている様子で
「今日は大変だった」
と話した時に、
「それならこうすればいいじゃない」
と解決策を提案したところ、
「ただ話を聞いてほしかっただけ」
と言われてしまうことがあります。
具体例②
冗談や社交辞令を真に受けてしまったり、
「今はその話題ではない」
という場面で自分の興味のある話を続けてしまったりすることがあります。
具体例③
子どもが泣いている理由や配偶者の不満に気づけず、
「どうして怒っているのか分からない」
という状況になることがあります。
対策例
① 判断に迷ったら確認する
相手の気持ちを推測し続けるよりも、
「こういう意味で合っていますか?」
「今はアドバイスより話を聞いた方がいいですか?」
と確認する方が誤解を減らせることがあります。
② 重要な発言は一呼吸おく
思ったことをすぐ口にすると、相手を傷つけてしまうことがあります。
特に、
-
注意
-
指摘
-
批判
を含む内容は、一度立ち止まってから話す習慣が役立ちます。
③ 信頼できる人からフィードバックをもらう
自分では気づいていないコミュニケーションの癖を知ることは重要です。
家族やパートナー、上司などから
「こういう言い方だと伝わりやすい」
という助言を受けることで改善につながることがあります。
受診を考えたほうが良いケース
人間関係で同じようなトラブルを繰り返してしまう、悪気はないのに「冷たい」「空気が読めない」「相手の気持ちを考えていない」と指摘されることが多い、職場や家庭でコミュニケーションの行き違いから孤立感や強いストレスを感じている、といった場合には専門医への相談を検討してもよいかもしれません。
特に、子どもの頃から友人関係が苦手だった、冗談や社交辞令の理解が難しかった、周囲と考え方のずれを感じることが多かったなどの傾向が続いている場合には、ASDの特性が関係している可能性があります。
また、人間関係の困難さが原因で適応障害やうつ病、不安障害などを繰り返している場合には、自身の認知特性を理解し、適切な対処法を身につけることが生活のしやすさにつながることがあります。