「よこはま北星こころとからだのクリニック」で心療内科・精神科を担当している、院長の島野です。今回はストラテラ(一般名:アトモキセチン)について解説します。
1. どんな薬?
ストラテラ(一般名:アトモキセチン)はADHD治療薬です。脳内のノルアドレナリンの量を増やすことでADHD(注意欠如・多動症)の症状である多動性、衝動性、不注意などに効果を示します。後発医薬品(ジェネリック医薬品)としてアトモキセチン錠・カプセルがあります。
2. 剤形・用法・用量は?
5mgカプセル、10mgカプセル、25mgカプセル、40mgカプセルがあります。ストラテラ®はカプセル剤形もしくは内用液の流通があります。後発医薬品であるアトモキセチン錠では錠剤とカプセルの両方が用意されています。割線は入っておらず半分に割ることはできません。1日の最大量は120mgまでです。ただし18歳未満の方は体重によって最大投与量が変わるので注意が必要です。
3. 副作用は?
頻度の高い副作用として悪心(31.5%)、食欲減退(19.9%)、頭痛(15.4%)、傾眠(15.8%)が挙げられます。他にも動悸、下痢、口内の乾燥、めまいなどが挙げられています。また、パキシル(一般名:パロキセチン)との併用によりストラテラの血中濃度が高まるため併用には注意が必要です。これはストラテラもパキシルもCYP2D6という酵素によって代謝されることが原因です。
参考:ストラテラの薬剤添付文書
4. 効果がすぐ出る?
ストラテラ(一般名:アトモキセチン)は内服を開始してから3-4週間程度で効果が出てきます。これは血中にお薬が入ってから脳へ届くのに時間がかかるためと考えられます。即効性がないお薬ですので、最初は副作用ばかりが目立ってしまうかもしれません。効果は遅れて出てきますので、副作用の程度をみながら内服を続けていけるかどうか考える必要があります。同じADHD治療薬のコンサータ(一般名:メチルフェニデート)は即効性があるため、すぐに効果を実感したい方に向いています。
5. ストラテラで性格が変わる?
ストラテラは多動性、衝動性、不注意を改善します。このようなADHDの症状が改善した結果、性格が変化したように見える可能性はあります。しかし、薬を飲むのをやめれば元の状態に戻ります。ストラテラをはじめとしたADHD治療薬により根本的に性格が変わってしまう訳ではありませんので、安心してください。
6. まとめ
ADHDの症状は、注意のコントロールが悪いことに起因しています。私たちは普段、身の回りの環境の中から必要な情報を抜き出して、つまり注意を向けることで生活しています。しかし注意のコントロールが上手くいかないと、本来必要ない情報に気を取られ、必要な情報を見落としてしまうことが起きます。情報の取捨選択が苦手ということですね。
ストラテラは脳内のノルアドレナリン濃度を高め、注意のコントロールを改善します。実際の患者さんからは「頭がすっきりした」「ほどよく集中できるようになった」という声をよく聞きます。一方で「薬を飲まないと元に戻ってしまうことが悩み」という声も聞きます。効果と副作用のバランスを見ながら、安全にお薬を使えると良いですね。
監修:島野 桂周(精神科医・精神保健指定医)
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