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パキシル【お薬Q&A】

執筆者の写真: Keishu ShimanoKeishu Shimano
パキシルについて解説する精神科医のワニ

「よこはま北星こころとからだのクリニック」で心療内科・精神科を担当している、院長の島野です。今回はパキシル(一般名:パロキセチン)について解説します。

 

1. どんな薬?


 パキシル(一般名:パロキセチン)はSSRIに分類される抗うつ薬です。うつ病・うつ状態パニック障害社交不安障害強迫性障害、PTSDの方に処方されることがあります。SSRIの中でも不安障害や強迫性障害に適応がある点が特徴です。日本国内では2000年から処方可能となり、現在ではジェネリック医薬品(後発医薬品)があります。


 

2. 剤形・用量は?


 パキシル錠には5mg錠、10mg錠、20mg錠があります。割線は入っておらず、半分に割ることはできません。パキシルCR錠では6.25mg錠、12.5mg錠、25mg錠があります。こちらも割線は入っておらず、半分に割ることはできません。徐放剤は錠剤の表面にフィルムコーティングが施されており、基本的に分割や粉砕ができない薬剤が多いです。

 パキシル錠の一日の最大用量は診断によって異なります。うつ病、社交不安障害、PTSDでは40mg、パニック障害では30mg、強迫性障害では50mgです。パキシルCR錠はうつ病・うつ状態にのみ使用可能で一日の最大用量は50mgです。また、薬剤添付文書では1日1回夕食後の内服と記載されています。



 

3. パキシル錠とパキシルCR錠って何が違う?


 どちらも有効成分は同じパロキセチンです。パキシルCR錠のCRは「Controlled-Release」=「徐放剤」という意味です。その名の通り、パキシルの有効成分がゆっくり溶け出すように設計されたお薬がパキシルCR錠ということです。パキシルCR錠の方が内服初期に多くみられる胃腸障害(吐き気や下痢)の副作用が少なく済みます。薬の血中濃度がゆっくり立ち上がるため、このような差が生まれると考えられています。ただしパキシルCR錠の保険適応は「うつ病・うつ状態」だけであることに注意が必要です。


 

4. パキシルで性格が変わる?


 パキシル(一般名:パロキセチン)は脳神経系に作用するお薬ですが、その作用は可逆的と考えられています。お薬の作用のせいで性格が永続的に変わるということはありませんので、安心して内服して頂けます。ただし、パキシルの副作用でActivation Syndrome(賦活症候群)というものがあります。内服開始直後に苛立ちや焦燥感が顕著となる副作用のことで、特に24歳以下の方で頻度が高くなる傾向があります。ですから内服を始めてすぐに落ち着かなくなるようであればすぐ主治医に報告し、指示を仰ぐようにしましょう。


 


5. パキシルを急にやめるとどうなる?


 離脱症状が出現する危険があります。抗うつ薬の離脱症状として耳鳴り、吐き気、頭痛、苛立ち、不安感などの症状が出ることがあります。内服を再開すべきか、それとも離脱症状が収まるのを待つべきかどうかは、状況によって異なります。パキシルの量を調整するときは自己判断はせず主治医に相談するようにしましょう。


 

6. パキシルの効き目はいつ出てくる?


 一般的に抗うつ薬は2-4週程度で効果が出てくると言われています。ただしあくまで目安ですので、年単位で飲み続けることで改善が現れることもあります。ただし強迫性障害の治療として抗うつ薬を用いる場合は、根気強くお薬を続けることが必要かもしれません。


 

6. まとめ


 パキシルは気分の落ち込みだけでなく不安の症状にも効き目があるお薬です。特に強迫性障害に保険適応のある、数少ないお薬の一つです。安全にお薬を使うためにも、薬に関する知識を身に付け、主治医と相談しながら治療方針を決めるようにしましょう。


 

監修:島野 桂周(精神科医・精神保健指定医)


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