大人のADHD
「過食」
当院では18歳以上の方を対象に発達障害の診断・治療を行っております。
大人のADHDで見られやすい「過食」について解説します
なぜ過食が起きやすい?
大人のADHDでは、過食が単なる「食べすぎ」ではなく、衝動性や気分の波、生活リズムの乱れと関係して起こることがあります。
ADHDの方では、目の前の刺激に反応しやすく、「食べたい」と思ったときにブレーキをかけにくいことがあります。
特に、甘い物や脂っこい物など、すぐに満足感を得やすい食べ物は、疲れているときやストレスがたまっているときに手が伸びやすくなります。これは意志が弱いからというより、“今すぐ楽になりたい”という気持ちが行動に結びつきやすい特性が関わっています。
また、ADHDでは、不安、いら立ち、退屈さ、落ち込みといった気分の変化をうまくやり過ごしにくく、食べることで一時的に気持ちを落ち着かせようとすることがあります。そのため、「お腹が空いているから食べる」というより、気分をまぎらわせるために食べていることも少なくありません。
さらに、食事の時間が不規則になりやすかったり、食事を後回しにして強い空腹のあとに一気に食べてしまったりすることも、過食につながりやすくなります。
このように、ADHDに伴う過食は、食欲の問題だけでなく、衝動性、ストレス、気分の調整のしづらさ、生活リズムの乱れが重なって起きていることがあります。
だからこそ、「食べすぎないように我慢する」だけではうまくいかないことも多く、背景にある特性や生活パターンを整理しながら対策を考えていくことが大切です。
過食が起きやすい状況
過食は、空腹そのものよりも、疲れやストレス、気分の落ち込み、退屈さが強いときに起こりやすくなります。
たとえば、仕事や勉強のあとで強く疲れているとき、対人関係でストレスがたまったとき、不安やいら立ちが強いときには、食べることで気持ちを落ち着かせようとしやすくなります。
また、ADHDの方では、食事の時間が不規則になりやすく、食事を後回しにした結果、強い空腹の状態で一気に食べてしまうこともあります。
さらに、夜間や一人で過ごしている時間、スマートフォンや動画を見ながらの食事など、気が緩みやすい場面では食べる量を意識しにくくなり、過食につながりやすくなります。
こうした状況が重なると、「少しだけ」のつもりが止まりにくくなりやすいのです。
過食への対策例
① 食べやすいものを手の届く場所に置きすぎない
過食は、その場の衝動で始まりやすいため、まずは環境を整えることが大切です。お菓子や甘い飲み物、大袋のスナックなどを家に多く置かない、目につく場所に置かないだけでも、食べ始めるきっかけを減らしやすくなります。食べる量を意志だけで抑えようとするより、先に環境を調整するほうがうまくいくことがあります。
② 食事の間隔を空けすぎない
食事を後回しにして強い空腹状態になると、一気に食べやすくなります。特にADHDの方では、食事のタイミングが乱れやすいこともあるため、朝食を抜かない、昼食が遅くなりそうなら軽く補食を入れるなど、空腹をためすぎない工夫が役立ちます。過食を防ぐためには、「我慢する」だけでなく、極端にお腹が空く状況を作らないことも大切です。
③ 食べたくなったときの“別の行動”を決めておく
過食は、不安、いら立ち、疲れ、退屈さなどをまぎらわせるために起こることがあります。そのため、食べたくなったときに何をするかをあらかじめ決めておくと役立ちます。たとえば、温かい飲み物を飲む、少し席を立つ、短時間だけ散歩する、ガムをかむなど、食べる以外の行動をワンクッション入れることで、衝動のピークが下がることがあります。
受診を考えたほうが良いケース
過食は一時的にみられることもありますが、繰り返し起こっていて自分では止めにくい場合や、生活に支障が出ている場合には、一度相談を考えてよい状態です。
たとえば、お腹が空いていないのに食べてしまう、食べ始めると止まりにくい、食べたあとに強い後悔や自己嫌悪がある、といったことが続く場合には、単なる食べすぎではなく、背景に衝動性や気分の問題、生活リズムの乱れが関わっていることがあります。
特にADHDの方では、疲労やストレス、不安、退屈さをきっかけに過食が起こりやすいことがあります。
また、過食によって体重増加が続いている、健康診断で異常を指摘された、食費や間食が増えて困っている、生活リズムが大きく乱れているといった場合も、受診を考える目安になります。
さらに、過食だけでなく、先延ばし、忘れ物、衝動買い、感情的になりやすいなど、ほかにもADHDの特性に関連する困りごとがみられる場合には、全体をあわせて整理することが役立ちます。
加えて、気分の落ち込み、不安、不眠、強いストレスがある場合には、それらが過食を悪化させていることもあります。
「食べることがやめられない」という表面の問題だけでなく、背景に何があるのかを整理することが大切です。
何度も自分で対策を試してもうまくいかない場合や、自分を強く責めてしまっている場合には、早めに相談することで、自分に合った対策や治療につなげやすくなります。