「よこはま北星こころとからだのクリニック」で心療内科・精神科を担当している、院長の島野です。今回は非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の比較について紹介します。
現在日本で使われる非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は
以上の3つがあります。
今回はこれらの各薬剤を様々な角度から比較します。
共通点としては
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬である
超短時間型睡眠薬に分類される
依存性・耐性・離脱症状が生じるリスクがある
筋弛緩作用や呼吸抑制作用が少ない
以上が挙げられます。
ベンゾジアゼピンと非ベンゾジアゼピンの違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
今回の記事の出典は下記よりご確認いただけます。
ルネスタの薬剤添付文書
アモバンの薬剤添付文書
マイスリーの薬剤添付文書
1. 最高血中濃度到達時間(Tmax)
ルネスタ 1時間
アモバン 0.9時間
マイスリー 0.7時間
薬を内服してから、血中濃度がピークに達するまでの時間をTmax(最高血中濃度到達時間)と呼びます。Tmaxが短いほど効果が早く出ます。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中ではマイスリーが最も早く効果が出てきます。
2. 半減期
ルネスタ 5.1時間
アモバン 4.0時間
マイスリー 2.1時間
半減期の長さは効き目の持続時間に関係します。半減期が短いほど翌朝の眠気は残りにくいですが、睡眠を維持する効果は弱くなります。
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のなかではマイスリーが最も早く代謝され、身体からなくなります。そのため眠気の持ち越しが少ないといえます。一方でルネスタが最も身体に残りやすく、中途覚醒を減らす効果が期待できます。しかし実際の使い心地がこれらの数値を反映するかというと、そうとも言い切れません。個人差もあるため、実際に内服してみた感想を聞きながらお薬を調整することが大切です。
3. 後発医薬品の有無
ルネスタ 後発あり(エスゾピクロン)
アモバン 後発あり(ゾピクロン)
マイスリー 後発あり(ゾルピデム)
後発医薬品とは、先発品と同成分であり、効果も先発品と同等と認められる薬剤のことです。ジェネリック医薬品とも呼ばれます。先発品の特許が切れるタイミングで後発医薬品が登場します。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にはどれも後発医薬品があります。2024年10月より「長期収載品の選定療養」が始まり、先発品の使用には特別料金がかかることとなりました。医療費抑制の観点から後発医薬品の使用が強く推奨されるようになりました。
4. 処方日数の制限
ルネスタ 制限なし
アモバン 30日まで
マイスリー 30日まで
3つのお薬の中では、ルネスタだけが処方日数の制限がありません。そのため月に一度の通院が難しい方にはルネスタの方が続けやすいお薬といえます。
5. 苦味の有無
ルネスタ:苦味あり
アモバン:苦味あり
マイスリー:苦味なし
3つのお薬では、マイスリーだけ苦味がありません。ルネスタやアモバンではおよそ10%の方に苦味の副作用が出現するといわれています。ルネスタやアモバンを飲んでみて苦味が気になる場合にはマイスリーを試してみると良いかもしれません。
6. 薬価
※()内は後発医薬品の薬価
ルネスタ1mg:39.3円(13.3円)
ルネスタ2mg:63.0円(21.2円)
ルネスタ3mg:77.3円(27.4円)
アモバン7.5mg:13.6円(6.5円)
アモバン10mg:15.3円(7.3円)
マイスリー5mg:27.3円(10.1円)
マイスリー10mg:44.9円(14.5円)
先発品、後発品を問わずアモバンが最も安価です。薬価は「古い薬ほど安い」という原則があります。アモバンは1989年発売であり、ルネスタ(2012年)やマイスリー(2000年)と比べ古いお薬なので、安価なのですね。ルネスタとアモバンではおよそ2倍の価格差があります。薬を選ぶ際には効き目や副作用のバランスが大切ですが、薬価も参考の一つにしてみましょう。
7. まとめ
今回は非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の比較をしてみました。様々な角度で比較して自分にもっとも合ったお薬を選べるよう、主治医とも相談してみてください。
監修:島野 桂周(精神科医・精神保健指定医)
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